チベット・コード 第二章 ダワヌツォの智者 10

徳仁様が言った。

「その乞食が口の中で唱えていた言葉を、強巴拉が大体覚えていたようだ。私に聞かせてくれた。それは仏典の中でも非常に強い力を持つ魔を降し妖を除くー不動明王咒だ!」

「あっ!」

方新もその歌訣のような土着の言葉がおそらくある祭祀の祈祷文であることに気づいていたが、不動明王呪とは思わなかった。仏典の三大降魔密咒、不動明王咒、大悲呪咒、六道輪廻咒はともに仏典中の最高のもので、得道した高僧がはじめて静かで明らかな心でこの咒を修めることができ、それは信仰と地位身分の象徴であり、けしてあの乞食が習うことのできるようなものではない。あの乞食はなぜそれができるのか?方新の内心の疑念が表情にも現れていた。

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